VPSの選び方徹底解説!

物理サーバ上に契約者ごとの仮想サーバを構築することで、あたかも専用サーバのように使用できるVPS(Virtual Private Server)を導入する個人・企業が増えています。VPSの選び方を具体的に説明します。

この記事の目次

1 VPSとは
2 VPSの仕組み
3 VPSのメリット・デメリット
4 VPSと共有レンタルサーバ・専用サーバ・クラウドサーバとの違い
5 VPSが向いている利用者とは
6 VPSの選び方&チェックポイント
7 おすすめのVPS

VPSとは

VPS(Virtual Private Server)とは、仮想サーバを提供する「仮想専用サーバサービス」です。契約者ごとに物理的なサーバが1台ずつ用意される「専用サーバ」と異なり、1台の物理サーバ上に契約者ごとの仮想サーバを構築します。

VPSの契約者は、サーバを物理的には専有しませんが、root権限(管理者権限)が付与されます。

VPSの仕組み

VPSでは、1台の物理サーバ内に、契約者ごとに独立した専用サーバを仮想的に構築します。

実際にはサーバは1台ですが、仮想的にサーバを切り分け、契約者ごとに割り振ります。

振り分けられた仮想サーバは専用サーバのように利用でき、他の契約者のOSと干渉しないので、他の契約者のサーバにアクセスが集中したとしても、自社のサーバは影響を受けることがありません。

VPSのメリット・デメリット

VPSの導入にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

VPSのメリット

他の契約者のサーバとは仮想的に独立しているので、同じ物理サーバ内で運用されている他のサイトにアクセスが集中したからといって、自社のサイトまで影響を受けて重たくなるということがありません。

また、専用サーバと同様の使用感ながら、専用サーバよりもコストが格段に安く、導入しやすいのもメリットです。

1つの物理サーバを共有する点では、共用レンタルサーバと同じですが、VPSは共用レンタルサーバよりも設定の自由度が高くカスタマイズ性に優れます。

VPSのデメリット

契約者ごとに仮想サーバが用意されるため、サーバメンテナンスも契約者自身で行う必要があり、共用レンタルサーバと比較すると、運用にあたり技術的知識が必要になります。

VPSでは契約者自身で仮想サーバが運用できるとはいえ、専用サーバよりは自由度が低く、どのようなソフトウェアでもインストールできるわけではありません。

また、VPSではインターネット接続環境が必須であるため、インターネット回線に障害が発生した場合は、サーバを利用できなくなってしまう他、物理サーバが故障した場合は契約者の仮想サーバもダウンしてしまいます。

一方、物理サーバ故障の影響を直接的に受けてしまうデメリットを解消するため、後述の「Pro-Web」のように3台の物理サーバに同時に分散コピーしてバックアップを作成し、物理サーバ故障時にもデータを参照できるVPSも登場しています。

VPSと共有レンタルサーバ・専用サーバ・クラウドサーバとの違い

レンタルサーバにはVPS以外にも、共有レンタルサーバ・専用サーバ・クラウドサーバなど様々なサービスがあります。それぞれどのように違うのでしょうか。

VPS・共有レンタルサーバ・専用サーバ・クラウドサーバの特徴は、それぞれ次のとおりです。

VPS共有レンタルサーバ専用サーバクラウドサーバ
1.CPUやメモリなどは各契約者で共有
2.アプリは契約者ごとに異なる
3.基本的に契約者にRoot権限(管理者権限)あり
4.自由度が比較的高い
5.コストが比較的安価
1.CPUやメモリなどは各契約者で共有
2.アプリも各契約者で共有
3.契約者にはRoot権限(管理者権限)なし
4.自由度が低い
5.コストが安価
1.CPUやメモリなどは契約者ごとに異なる
2.アプリも契約者ごとに異なる
3.契約者にRoot権限(管理者権限)あり
4.自由度が高いコストが高い
1.CPUやメモリなどは契約者ごとに異なる(仮想サービスとして)
2.アプリも契約者ごとに異なる
3.クラウドの知識が必要
4.コストが比較的安価

VPSが向いている利用者とは

VPSのメリットとデメリットを踏まえ、VPSを選択すべきなのはどのようなケースでしょうか。

VPSが向いているケース

VPSは、専用サーバほどのコストはかけられないが自由度の高いサーバ運用がしたい中・小規模企業などに特に向いています。また、Webサイトの運用のように、比較的負荷が低く大幅なカスタマイズを必要としないものを運用する場合に適しています。

また、使いたいアプリがあるなど、共用レンタルサーバではカスタマイズ性が不足という場合にも向いています。

VPSが向かないケース

VPSは、自社独自の生産管理システムの構築など、高い自由度や性能が必要な大規模カスタマイズを伴う運用には不向きです。

また、VPSは、自由にサーバを構築してテストできる開発環境を作る用途には、向いていません。

VPSの選び方&チェックポイント

VPSを選ぶときにはどのようなポイントを確認すべきでしょうか。

無料試用期間の有無

VPSの使いやすさや動作の快適さなどは実際に使用してみないと分かりません。

契約したいVPSに試用期間が設定されているか、またその期間中は無料で使えるのかは重要なチェックポイントです。

VPS各社ともスペックや速度などデータを公表していますが、データ転送速度の公表値はあくまでも上限値であり、クライアント側の環境との組み合わせによっては遅延が発生する場合もあります。

VPSを契約してしまう前に、試用して自社の環境で負荷テストを行うことが大切です。

コスト(料金)

コスト(料金)は、VPSを契約する際に一番気がかりなポイントでしょう。

VPSのコストについて検討するときは、基本的に、毎月支払う利用料金と別に初期導入費用がかかる点に注意が必要です。

また、利用料金は月額制のサービスに加え、12ヶ月分をまとめて決裁すると月額より安くなる年額プランを用意しているサービスもあります。

利用料金はサーバのスペックに比例して高額になりますので、VPSでやりたいことを過不足なく行えるプランを選択しましょう。

スペック・性能

VPSのスペックで確認するべきは、CPU・メモリ・ディスク容量・ハードディスクです。

特に重要なのがメモリで、メモリの能力以上の処理を行うとサーバに負荷がかかり、処理速度が大幅に下がります。コーポレートサイトなど顧客に公開するサービスを運用する場合は、サイトが重い・閲覧できないということは避けたいので、メモリ容量が必要十分なVPSのプランを選びます。

また、ファイルサーバやメールサーバなど大量のファイルを保存する用途であれば、ディスク容量を重視して選びます。

機能

VPSには各社ともそれぞれ強みと弱みがあり、利用できる機能は異なります。

例えば、Webサイトの運用がメインであれば、Webインポート・SSL/TLS証明書・WordPress・独自ドメイン取得などの機能を搭載しているVPSが最適です。

また、ソフトウェア開発用途であれば、OSやLinuxディストリビューションの選択が可能かもチェックすべきポイントです。

コントロールパネルの使いやすさ

サーバ技術者が確保できている場合は問題ありませんが、小・中規模企業では、コーポレートサイトの管理者がVPS管理も任されてしまうということが少なくありません。

そのような場合は特に、コントロールパネルの使いやすさとユーザサポートが手厚いVPSかどうかは必ずチェックすべき点です。

物理サーバの堅牢性

「VPSの仕組み」で説明したとおり、VPSの多くは1台の物理サーバ上に仮想的に複数のサーバを構築しています。このため、物理サーバが故障してしまうと、各契約者の仮想サーバは直接的に影響を受けてしまいます。

故障のリスクのない物理サーバはありません。万が一の故障に備えて、他のサーバに常時バックアップを取る仕組みや、故障時に早期復旧できる仕組みを備えたVPSプロバイダを選択すべきです。

VPSセキュリティ性能

企業のサーバを狙ったサイバー攻撃の増加を受け、サーバのセキュリティがますます重視されています。例えば、VPSで運用しているコーポレートサイトが攻撃を受け、顧客の個人情報が漏えいしてしまった場合、サイトを運営している企業には刑事上の罰則と民事上の賠償責任が生じる上、社会的な信用も低下してしまいます。

コスト面だけを見てVPSを選択してしまいがちですが、セキュリティ性能の高さはVPSを選ぶ上で最優先事項になりつつあるといっても過言ではありません。

おすすめのVPS

VPSの仕組みや選び方を踏まえて、おすすめしたいVPSをいくつか紹介します。